【花たちのささやき】
庭先にある花の匂いに包まれた細い道。
その先に、だれかがいるのが見えた。
ふわふわした大きな耳と、ふさふさのしっぽ。
「こんにちは」
ぼくが声をかけると、フェネックの子がこちらをふり返った。
「ここは、おしゃべりな花たちのさんぽ道なの」
そう言ってすこし笑う。
ぼくたちはならんで歩いて、花たちのそばで座った。
風の音と、小鳥の声。
それから、花たちのひそひそ囁く声が聞こえてきた。
「アウリ、新しいお友だち?」
「ふふふ、わたし、今日はとてもいい匂いよ」
「……アウリ?」
思わず聞き返すと
「この子の名前。いつも話を聞きにくるの」
おしゃべりな花たちが教えてくれた。
ざあっと風が吹いて
花たちの声は、ちりぢりに風にとけた。
「また来ていい?」
ぼくが聞くと
アウリはうなずいて、小さく手をふった。
それからひらりと花の奥へ消えていった。
Illustration & Text (C)tono
編集部より
ノアには花たちのささやきがどんな声に聞こえたのでしょうか。またアウリに会えるといいですね。
次回は6月下旬公開予定です。公開のお知らせはパイコミックアートのXにてお知らせします。ぜひフォローしてお待ちいただければ幸いです。