迷子の少女は、見覚えのない道からどう抜け出せばいいのかわからず途方に暮れていた。
路地を曲がれば曲がるほど分からなくなり、不安が押し寄せてついに泣き出してしまった。
そのとき、どこからかコンコンと窓を叩く音がした。
顔を上げると白くて小さなお店の窓に、クマのぬいぐるみが座っている。
「聞き間違いかしら。でも、クマさんは私を呼んでるみたい」
不安な気持ちも吹っ飛んで、少女は好奇心の赴くままにそのお店の扉を開けた。
絵本の中に出てきそうな色んなものが、棚や机に所狭しと並べられている。
剥製にお人形、お皿や本、そのほか何に使うのか分からないものでいっぱい。
奥まで進むと、さっき入口の方にいたはずのクマのぬいぐるみが仲間たちと一緒にベッドで眠っている。
それを見ていると、だんだん眠気がやってきて…
少女は不思議な夢を見た。
天使が遊ぶ金ぴかのヨット、喋る顔つきパイプ、紙から飛び出す変な動物、私によく似た妖精のための小さなベッド…
私の知らない色んな物語が代わる代わる頭の中に流れていく。
微かに誰かの話す声がした。
「ドール用のベッドがぴったり。みんな、お話は程々にね。」
目を覚ますと見知らぬ青い髪のお姉さんが目の前に立っている。
そしてそのとき、私は夢の中に出てきたモノたちが周りにいることに気がついた。
「おはよう迷子のお嬢さん。みんな一体、どんな夢物語を見せたのかしら」
おしまい
text:まくらくらま
「ノアンティクの夢物語」は今回で最終回です。最後までお読み下さりありがとうございました。
この夢の続きは、きっと、またどこかで……
このWEB連載をまとめた書籍『まくらくらまイラストカードブック ノアンティクの夢物語』を2022年11月15日に発売することが決まりました。他の様々なアンティークたちの夢物語は書籍でお楽しみください。