あるところに、シルクのように光り輝く、ラベンダー色の美しい髪を持った少女がおりました。その髪は、どんなに鋏で切っても、切った分だけ伸びてくるという魔法が掛かっていたのです。
ある日のこと
噂を耳にしたならず者たちが少女を攫い、地下に幽閉してしまいました。
そして、魔法の髪で大量のルリケールを作り、売りさばいたのです。
ならず者たちは、ルリケールに装飾されたラベンター色の髪を、とある聖人の遺髪と偽りました。
美しいルリケールは、持ち主に奇跡をもたらすと評判になりました。
切っても切っても美しい髪は伸び続け、ならず者たちは大金持ちになりました。
数か月が過ぎ
髪を切られるだけの自由のない生活に、すっかり心が廃れてしまった少女は隠し持っていたナイフで己の心臓を刺して死んでしまいました。
魔法の髪はとうとう伸びなくなりましたが、数えきれない程作られた美しいルリケールは街中に溢れ人々の心に希望を与えているのでした。
”ルリケール”とは
一般的に、キリスト教の聖人の遺品「聖遺物」が収められた箱やフレームで、遺髪を纏めて花や十字架をかたどり装飾されました。聖遺物は、持ち主に様々な奇跡をもたらすと信じられてきました。
text :まくらくらま
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