【第2話 変転神(ヘンテンガミ)】
ガキの頃から、神さんが【見える子供】だった。
それだけならまだしも神さんに【見つかる子供】でもあった。
爺ちゃんの弟もそうだったらしい。「可哀想に、あいつは本当に可哀想な子だった。」爺ちゃんが口癖のように言っていたのを思い出す。
俺も赤ん坊の頃に見つかって、それで全身に傷が残った。
爺ちゃんは「ヒヒ」の姿をしたカミさんに齧られたと言っていたが、さすがに信じられず野犬なんかが入り込んだんだと最近まで思っていた。
それくらい、俺の家は貧乏であちこち隙間だらけだからだ。
爺ちゃんに、外を歩く時は傷を隠すようにと言われている。
婆ちゃんは旅行の度にあちこちで、俺のために御守りやら数珠やらを買ってきては「きつねがつかで暮らすにはそうするしかない。この町は元々カミさんの町だったからな」と繰り返す。
そのお陰か、俺は今でもこうして無事に生きている。
「−−−って話を前に三ツ夜にもしたよな。」
「うんうん、聞いた聞いた。」
はあ〜っとため息が漏れる。
俺の周りにはぐるりと注連縄が廻らされており、ある一角だけが空いている。まるで生簀だ。
「だからーこん中に神さんを呼び込むんだ。姿が見えないみたいで全然捕まらなくてさ〜。この中でゆっきーが包帯をとって傷を見せるって作戦!」
「俺は釣り餌か」
「大丈夫!大丈夫!絶対上手くいくから!」
「他の神さんが入ってきたらどうする」
「結界に名前を書いているから他の神さんは入れないはずなんだ!」
……本当にうまく行くのだろうか。三ツ夜の楽観さには時々不安になる。
キャラクター:東 幸哉
第2話 変転神(ヘンテンガミ)終わり
Illustration & Text (C)tsukku
今回は、妖平の友達、狐ヶ塚の普通の高校生 ゆっきーこと東幸哉くんの日常をお届けしました。「げんきな町 きつねがつか」のお話。次回もどうぞお楽しみに。
次回は9月中旬更新予定です。