PIE COMICS

ボローニャ・ラガッツィ賞授賞式随行レポ23.05.12更新

SHARE ON

現地コミック作家さんとの交流会&「ひゅーひゅーやんや」な授賞式(3/6)

ボローニャ滞在 2日目。
この日の朝は、坂月さんが体調を崩されてとても心配でしたが、午後には回復に向かいほっとしました。回復して早々、申し訳なく思いながらも「もう大丈夫です」と言ってくれたので、午後からは、予定どおりボローニャ在住のコミック作家さんたちとの交流会に参加しました。

ボローニャの美術大学にはコミック科もあるそうで、ボローニャにはコミック作家がたくさん住んでいるそうです。この会を主催してくれたのは、ボローニャ在住の漫画家の市口桂子先生です。実は、私は出発前に市口先生のエッセイ漫画『北イタリアまったりマンガ家夫婦日記』を読んで、全く未知だったボローニャの知識をにわかに蓄えていました。前述のボローニャのポルチコのことも市口先生の漫画で知りました。

 

交流会の会場は、イタリアの大変著名なコミック作家Giuseppe Palumboさんが代表を務めるSTUDIO INVENTARIOでした。こちらのスタジオは複数のコミック作家が作業をしている共同オフィスのような場所です。総勢11名の作家さんたちが、交流会に参加してくれました。

まずは坂月さんが英語で『プラネタリウム・ゴースト・トラベル』を紹介するスピーチを行いました。
その後、市口先生がイタリア語の通訳を努めて下さり、質疑応答やイタリアと日本の漫画事情なども語り合いました。

印象に残った話としては、スタジオ代表のGiuseppe Palumboさんは、イタリアコミック業界のなかでも、すでに大御所と呼ばれる作家ですが、大友克洋先生の『AKIRA』に衝撃を受けて漫画を描き始めたそうです。つまり、現在、イタリアで活躍するコミック作家は大御所と呼ばれる世代から若手まで、すでに少なからず日本のMANGAの影響を受けて育っているという話でした。

また、イタリアでは、ストーリーから作画まで一人で行う作品もありますが、ストーリー、下描き、ペン入れ、着色と完全に分業で行う作品も多いそうです。それぞれが得意分野を担当し、1つのクオリティの高い作品を作るという方法です。

ゆえに、イタリアでは、日本の徒弟制のようなアシスタント制度はなく、分業として作業の一部を請け負うというスタンスになっているそうです。でも、参加していたボローニャの作家さんが、日本の漫画で見た作家とアシスタントが寝食を共にし、共同生活をして漫画を作るスタイルにもちょっと憧れがあると言っていたのも印象的でした。

Giuseppe Palumboさんをはじめ皆さん、大変、フレンドリーで「これが、私が描いた作品だよ」と次々に自著を持って、坂月さんに見せにきてくれました。

日本の漫画で日本語を覚えたという若い作家さんは、坂月さんに日本での漫画家デビューの方法を熱心に質問され、対する坂月さんもとても親身に相談に乗っていました。そんなこんなで2時間ほどの交流会が終わりました。

市口先生、Giuseppe Palumboさん、そして参加してくれた作家の皆さま、ありがとうございました。

交流会に参加いただいた皆さんと記念撮影。
左から2番目が坂月さん(本人の希望で顔はイラストで加工しています)
坂月さんの左隣の和服をお召しの方が市口先生、右隣がGiuseppe Palumboさん

その後一旦、ホテルに戻り、ラガッツィ賞授賞式に向かいました。

授賞式は、1日目の散策で訪れたマッジョーレ広場の一角にあるエンツォ王宮で行われました。13世紀半ばに建造されたとても風格のある歴史的建造物ですが、会場はクセ強めの紫のムーディーな照明で演出されていました。

すでに、アルコールや軽食が用意されており、授賞式が始まる前から、参加者たちは皆、ほろ酔い気分でご歓談ムード。というか、一向に授賞式が始まる気配がなく、このパーリーな雰囲気に馴染めない私はずっと手持ち無沙汰でした 笑。

会場に入ってから1時間程経って、ようやく授賞式が始まりました。授賞式というと「厳かな式典」を想像していましたが、全く違いました。

特に、ラガッツィ賞の授賞の前に行われた、世界の各地域の優れた児童書出版社を顕彰する「ベスト・チルドレンズ・パブリッシャーズ・オブ・ザ・イヤー」の発表は、名前を呼ばれた出版社の人々が、雄叫びを上げ、拳を上げ、踊りながら壇上に駆け登っていました。観ている人たちも、ひゅーひゅーやんやと喝采を浴びせます。え!?授賞式ってこんなんなの!?とすっかり毒気を抜かれてしまいました。

ラガッツィ賞の授賞もベスト・チルドレンズ・パブリッシャーズほどではありませんが、ひゅーひゅーやんやの喝采は止まず、壇上に上り記念の盾を受け取った受賞者たちは、プレゼンテーターと、がっつりハグとチークキスを交わして喜びを分かち合っていました。「これ自分たちもやるんですかね?」と壇上に上がる坂月さんと弊社社長が苦笑して見ていました。

いよいよ、コミック部門の表彰が始まりました。作品タイトルと名前がコールされ、壇上に上がる坂月さんと社長。坂月さんが記念の盾を受け取った時は、やはりとても誇らしく、感慨深かったです。ちなみに、プレゼンテーターの方は、ハグとチークキスはせずに、日本式に?手を胸の前に合わせ合掌をしてくれました 笑。こうして授賞式は無事に終わりました。

私たちは早々に会場を後にしましたが、ボローニャブックフェア60周年記念パーティーも兼ねているこの宴は、授賞式終了後も深夜まで続いたそうです。

背後からムーディーな照明が漏れる表彰式会場エンツォ王宮の入り口

パーティーメガネをかけた弊社社長。
ボローニャブックフェア60周年記念式典も兼ねている授賞式。
入り口では60フレームの紙製メガネが配布されました

会場の様子

授賞式の様子。右から2番目が坂月さん、その左隣が弊社社長

授賞式後、記念の盾を掲げる坂月さん

おめでとうございます!

【第4回】いよいよブックフェア会場へ!異国の地でサイン会につづく

WEB連載

ボローニャ・ラガッツィ賞授賞式随行レポ

編集部・斉藤

SHARE ON

関連書籍

電子書籍

『プラネタリウム・ゴースト・トラベル』

坂月さかな作品集

坂月さかな

『プラネタリウム・ゴースト・トラベル』

坂月さかな作品集

坂月さかな