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御霊帰し(みたまかえし)24.06.21更新

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神と人と、

【神と人と、】

血の滲んだ布団には夕、いや、ヨビヒコサマが眠っている。

こっこの手を借り何とか夕を三ツ夜神社まで運んできた。血が流れる腹に日本酒をどくどくと注ぎながら、ヒヒの障りさえ取れれば何とかなるとこっこは言った。

 

「社(やしろ)があっても今や力を無くした神さんは多い。ヨビヒコも、昔はヒヒなんぞ相手にしなかった。力を無くした神さんは本来、御霊帰しを望んでるんじゃ。人の信仰がなければ消えてしまうか、強い神さんに食われるだけじゃ」

ヨビヒコサマは時代と共に信仰を失い、生き残るために夕に成り代わったのか?しかし社への執着も本能的に抑えられず、結果どちらも選ぶことができず人と神さんの間を彷徨っていたのか……。

「本来こっちに来るなら神さんである自分と決別しなきゃならん。妖平は、ヨビヒコに神か人か選ぶよう引導を渡してやれ。神を選ぶなら……今のうちに帰してやれ」

そう言って俺の頭を撫でた。

「色薄くなったの……帰しすぎじゃ。父親のようになるぞ」

こっこが血の溜まった桶を外へ捨てに行った。

御霊帰しのことはずっと深く考えないようにしてきた。父のように思い悩むのが怖くて、流されるままにやってきた。だから夕のことも気がつけなかった。俺も自分が何者でありたいかなんて選べていない。でも、夕は「消えたくない」と確かに言った。

眠る夕にそっと語りかける。

「どっちがいい?神と人と」

「お  や  ま」

返ってきたのは聞き慣れた夕の声ではなく複数の子どもの声だった。

 

第13話 神と人と、 終わり

Illustration & Text (C)tsukku

次回、最終回は7月更新予定です。

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御霊帰し(みたまかえし)

つっく

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