PIE COMICS

御霊帰し(みたまかえし)23.12.29更新

SHARE ON

温泉回(オンセンカイ)

【温泉回(オンセンカイ)】

みんなで三ツ夜神社に泊まった次の朝、近所の温泉に行った。

風呂上がりに休憩所で休んでいると「妖平君、いいところにいたわ! 近々神社に行こうと思ってたの。ちょっといいかしら」年配の女将に声を掛けられ、嫌な予感しかしなかったが着いて行った。

廊下の隅にガラスケースがポツンと置かれ、中には鬼の顔をした人形が爛々とした目でこちらを見ている。そして、もう一人、誰かがこっちを見ている気がした。

「蔵の片付けをしたら出て来たの、夜中に叫んで暴れてね、気味悪いから持っていってよ」女将はガラスケースと一緒にスイカを、よいしょっと押し付け「これお礼ね」とにっこり笑った。まさかスイカをお駄賃に御霊帰しをしろと…?情けないことに、こんな時に断れないのが俺の性格だ。

大荷物を抱えみんなのところへ戻ろうとしたが、やっぱりどこからか強烈な視線を感じる。見渡すと、食堂の扉前に飾られた小さな男の子の人形がこっちを見ていた。

「ヨビヒコサマが、どうかした?」人形に釘付けになっている俺に、女将が声をかけた。「若い夫婦の家に飾ると男の子の姿をした神様が来て、もてなすと子宝に恵まれるの。昔あちこちにあったのよ。でも、もう子供がいる家は玄関に赤い布を下げておかないとね、ヨビヒコサマが入って来ちゃって、子供を取られちゃうの……」

ヨビヒコサマ……?どこかで聞いたような……。

 

休憩所に戻ると早速、夕がガラスケースを揺らして遊びはじめた。「ギャー!!!」「こいつめっちゃ怖がってるんだけど!おもしれー」可哀想な人形の神さんは、三ツ夜神社に着く頃にはすっかりおとなしく小さく縮んでいた。

 

御霊帰しのとき、こっこが人形を撫でながら「みんなに覗かれて意地悪されて、怖かったんじゃて」とくすくす笑った。

「ご…ごめんね…」俺は小さな神さんに謝った。

 

第7話 温泉回(オンセンカイ)終わり

Illustration & Text (C)tsukku

みんな揃った温泉回、いかがでしたでしょうか。

来年も『御霊帰し』をどうぞよろしくお願いします。

次回は1月下旬更新予定です。

WEB連載

御霊帰し(みたまかえし)

つっく

SHARE ON