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御霊帰し(みたまかえし)24.01.19更新

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共喰い(トモグイ)

【共喰い(トモグイ)】

じいちゃんに頼まれた用事の帰りに鎮守の森の脇を通ると、奥に続く石段から見覚えのある男が降りてきた。

ここは、町の外れの古びた神社。それを覆うように鬱蒼とした鎮守の森が広がっている。

狐ヶ塚に戻ってきたばかりの頃、興味本位に森の奥まで足を運び、そこのヌシらしい神さんに出会ったことがあった。

男の顔にムカデのような身体。よく見るといくつもある脚は全て手の形をしている。胴についている赤い布切れが靡(なび)くたび、じゃわじゃわと音を立てた。町にいる神さんとは違う、今までに見たことがない禍々しい姿のヌシはじっと俺を見ていた。

「神さんと目を合わせるな」かつて聞いた父の声が頭をよぎった時には、もう目を合わせてしまっていた。俺はヌシから目を逸らさずにゆっくりと後退りをした。瞬きすら許されない、だらりと冷たい汗が流れた。

だが、ヌシは急に興味を失ったかのように顔を背け、そのまま奥へと消えていった。俺の膝はずっと震えていた。

後になって、そこは狐ヶ塚の「禁足地」だと教えてもらった。あれから一度も鎮守の森には入っていない。

 

「夕!?」

「おー、妖平じゃん」

いつもと変わらない彼だが、手に重そうなナイロン袋を下げている。

「うわっ…何これ…」

ニヤリとして見せてくれた袋の中は白い猿の頭だった。歯を剥き出しにして白く濁った目が空を睨んでいる。

「本物?」

「そう、ヒヒ神」

野生の猿はたまに見かけるが、それよりも大きく、血まみれの牙も立派だ。

「それ…どうしたの?」

「拾った。奥で」

「もしかして、奥にいるヌシがやったの?」

「ヌシ? 知らねーけど、よく落ちてるよ」

夕は禁足地のことを知らないのか? なぜここにいるのか? 聞きたいことは山ほどある。でも、彼は俺が疑問を口にするのを遮るように

「この先で貞作さんが野焼きしてるじゃん、一緒に焼いてもらおうと思って」

と言った。

「いや、神さんなら危ないよ、俺がちゃんとやっとくから」

「そうなの?」

「神さんは、直接危害を加える事もあるけど、祟ったり障りを起こしたりもするから気をつけて」

前にも夕が神さんを蹴り飛ばしているのを見た。彼は自分の身を守るために呪(まじな)いをかけていると言っていたが、呪(まじな)いだけでは到底敵わない時があることを、俺は知ってる。

「ふーん、じゃあはい。ありがとな」

彼はまるで興味がなさそうに持っていた袋を俺に寄越した。

 

なぜ彼は全く神さんを恐れないのだろうか。

 

第8話 共喰い(トモグイ)終わり

Illustration & Text (C)tsukku

夕くん……⁉︎ なのか?

次回は2月下旬更新予定です。

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御霊帰し(みたまかえし)

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